悲劇

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夜になってから、小枝は再び電話を掛ける。4回コールして諦めた。 その晩は気持ちが沈み、会えない寂しさと言い知れぬ不安に押し潰されそうになる。 翌朝小枝は悪夢を見て、激しい動悸で目が覚めた。 内容は覚えていなかったが、恐ろしさだけが脳裏に残り、一日中塞いで過ごすことになった。 (貴彦さん!会いたい!一体どうしたの?) 小枝の心痛は、体調に及ぶほどになっていた。 事件から三日目の月曜の朝、榊が事務所に着くと、既に出勤していた三人のスタッフと一緒にいる年輩者が真剣な面持ちで話をしている光景を目にした。 スタッフたちの顔色は蒼白だったのが気になった。 (あの人は、4階だかのナントカ商会の社長じゃないか?) 榊は「よっ、おはよう」とその場のものたちに声を掛ける。 彼らは榊の登場にホッとすると、すぐに泣きそうな顔になり、今社長から聞いたばかりの事件のあらましを語って聞かせた。 社長は、 「こんなことになって、私は責任を感じております」 と言い、頭を深く下げた。 そして、貴彦の入院先と今朝方問い合わせた容態を伝えると、自分のオフィスに戻って行った。
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