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「どういうひとなのかしらねぇ…」
母がそう呟いた時、秋子が、あっ!と叫び声をあげた。
夫と義母を驚かし、秋子はアップアップしながら、指で義母のバッグを指差した。
「毎日電話が鳴るって、お母様仰ってましたよね!」
秋子は興奮していた。
「ああ。毎日違う時刻に掛かってきて、4回鳴って切れるの」
将一は合点がいって、あっとひと声あげる。
「母さん、そのひとだよ、きっと。電話は貴彦の彼女だったんだよ」
母は漸く理解した。そしてバッグから、預かってからそのままだったビニール袋を取り出すと、その中から携帯を引っ張り出した。
秋子が引き受けて、着信履歴を開く。
そこには『小枝』という名がズラリと並んでいた。
「やっぱり…」
三人で寄り集まって携帯を覗き込んだあと、揃って貴彦の顔を見つめる。
三人の思いは図らずも同じだった。
恋人の存在はうれしいが、この状態で果たして喜んで良いのだろうかと。
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