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翌日、土曜日の午後。担当の看護師が、榊が来たことを伝える。
病室には母と秋子がいた。
二人はすぐに待合室に駆けつけ、挨拶もそこそこに榊を病室に引っ張ってきた。
カーテンの向こうのベッドには、頭に包帯を巻かれ意識なく横たわる友の姿があった。
榊は込み上げるものがあったが、なんとか堪える。
病室は特別室で、ベッドの他に応接セットとバスルームが備わっていた。
そのソファーを勧められ、榊は二人を正面に腰を下ろすと、母が話を切り出す。
「榊さん、お忙しい所をお引き留めしてすみません。それに、毎日この子の様子を聞きに来て下さっているとのことで、ありがたく思っています」
榊が返事をする前に秋子が続ける。
「榊さん、私たち、小枝さんにお会いしたいのです」
突然の小枝の名に、榊は驚き唖然とした。なぜ家族が小枝の存在を知っているのかと。
「え?あの、どういうことでしょう?」
二人は顔を見合わせ頷くと、秋子が口を開いた。
「小枝さんには今度の貴彦さんのことは伝わってないと思っています。
榊さんは、小枝さんのことをご存じではありませんか?
私たち、このこと…知らせたいのです」
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