明かされた真実

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母は息子に抱きつき無言のまま泣いた。 秋子はナースステーションに飛んで行った。 安堵の中、榊は小枝の視線を捉えると笑顔で頷き、小枝もまた、同じく頷き返した。 穏やかな空気が暫し流れる。 貴彦は、母の落ち着き具合を計り声をかける。 「母さん、心配かけたね。もう大丈夫だから」 母は涙を収めて顔をあげると、息子に微笑みかけた。 「榊も…大変だったろう。一体何日経ったんだ?」 「ちょうど一週間よ」 母が答えた。 「そんなに?」 貴彦は小枝を見て事実を確認しようとする。小枝が頷くと、ふぅとため息をつく貴彦。 気持ちの上ではいろいろ知りたいものの、頭ではやはり確認作業が疲れた。 「仕事の虫だからな、お前は。相当きつかったぞ。いつか返してもらうからな」 貴彦の疲労を察して、榊は軽く返した。 その時、秋子が看護師と担当医を連れて戻る。 診察をするからと、家族たちは病室を出された。 同じ階にある待合室で待つ間、小枝は彼の母と義姉から二、三質問にあった。 どのくらいのつき合いになるかと聞かれ、4ヶ月ほどと答えた。 誰かの紹介かと聞かれ、偶然の出会いだと答えた。 秋子の、彼のどこが好きかとの質問には少し戸惑ったものの、すべてだと正直に答えた。 榊は端で黙ってそのやり取りを聞いていたが、胸の内は辛かった。 そこへ看護師がやってきて、検査をするため2~3時間待たせることを告げる。 それなら食事をすませましょうと母が言うと、小枝は自分は大丈夫だからと遠慮した。正直、未だ気持ちの落としどころがわからないでいた。 榊が、小枝と二人で待機しているからと母たちの背中を押す。 将一に連絡をと言いながら立ち去る二人を見送ると、榊は、「さあ、どうする?」と、小枝に問う。 小枝はここで待つと答えた。 榊は、下の階にある患者と家族のためのラウンジに小枝を誘い、それぞれ飲み物を買うと待合室に戻った。
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