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「…それで、対人関係のことだけど、あいつにとっては不愉快で不本意なことだろうが、幼稚園時代からずっと女にもてていたらしい。
もてるというより纏わりつかれていたんだな。
あいつは嫌がって泣いたり怒ったりで、そういう子たちを追い払っていたそうだ。
小学生以後は知恵がついて、二度と来ないように、きつい暴言を吐くようになったとか。
他人に対するガードの固さみたいなものは、その頃に形成されたんだろう。ひとを遠ざけるためなら嫌われてもいいってね」
「そう…」
小枝は俯いたまま静かに聞いていた。
榊は話を続ける。
「大学に入ってからも、無愛想で不機嫌な奴って避ける者もいたが、なんせ目立つ存在でね。寄ってくる者も多かったな。
僕が絡んでいろいろあったことで、その頃の不快な出来事が今の僕への態度の原因なんだと思うよ」
なるほど、という説明が続いて、ふと小枝は榊への興味が湧いてきた。
「榊さんは、そんな彼に対して腹が立つことはないの?」
「いや…あいつとは似たもの同士なんでね。表面に表れている性格的なものは正反対に見えるかもしれないが、心に抱えているものが似てるんだ。
だからあいつが吐く暴言は、僕の心情を代弁している。あいつがどう思おうが、僕はそう思っている。
それに…」
「それに?」
榊は一瞬言い淀み、躊躇を見せるが、小枝に促され話し出す。
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