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「…あいつは特殊な環境を背負って生まれた。多分、それは今も変わらないんだろうな」
呟くような榊の言葉だった。
小枝は、えっと顔を上げて榊を見つめる。
「あいつからちゃんと聞くんだよ」
榊から話を聞くまで、小枝は、貴彦の性格形成に大きく影響した家庭の事情を、彼にとっては過去のものとして受け取っていた。
榊の言葉、今も…と言うのはどういうことなのだろうかと考える。
(お母様とお義姉様の様子からは、普通の家族のよう…やはりお父様と言うことかしら)
小枝に不安はなかった。
ただ、貴彦がそんなにも重い荷物を背負っているのなら、なぜ自分に打ち明けてくれないのか、まだ心を全て曝すことに抵抗があるのかと思うと鬱ぐ。
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