300人が本棚に入れています
本棚に追加
/334ページ
「榊さん、そんなにいろいろしてもらっても、私、お返しができないのよ」
小枝は仕方なく一緒に歩き出しながら、恐縮しつつ本音を告げる。
榊は愉快そうに、
「そう、それ。その言い方だよ」
と、小枝が困っているというのに、はしゃぐように陽気に言った。
「君は自覚がないかもしれないけど、僕と会うのはまだ三度目なのに、君はすごく砕けた話し方をするんだ。
お返しなんかより、僕はそうしてもらえるのがうれしい。
友達の恋人と、友達になれるのがね」
「榊さんたら…もちろん、もう友達ね。
そう言われてみたら、まだ三度目なのね。私ったら馴れ馴れしいのかな」
「いや、そうじゃないよ。
変に思わないで聞いて欲しいんだが、僕らは波長がすごく合うみたいだ。
だから出会って間もないのに通じ合える」
榊は気持ちを悟られないように、言葉を選んで告げる。
最初のコメントを投稿しよう!