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調べを終えて少しホッとした様子の貴彦に、小枝は「疲れた?」と声を掛け、ベッド脇に寄る。
貴彦は昨日より顔色が良く、元気そうに見える。
「いや…それより、ごめん。嫌な話を聞かせて」
貴彦は、警察と話していた時の小枝の表情を見ていた。
小枝には少し刺激が強すぎたと、部屋に留まることを勧めたことを後悔していたのだった。
小枝は彼に笑顔を見せて、大丈夫だと頷いた。
二人は手を触れ合い、癒しあうかのように互いのそれを撫でていた。
「それで、リハビリの方は?もう始まったの?」
「うん、今朝から。まだ30分ぐらいしかさせてもらえないけど」
貴彦はここでクスッと思い出し笑いをしてから続ける。
「昨夜は、君が帰ってから寂しくなって部屋の中で歩き回っていたら、看護師に怒られたよ」
歩いたと聞いて驚いたものの、小枝も可笑しくなって笑った。
「急に始めたらダメだって。だから今朝は早くから歩いていたんだ。警察が来なければ、もっとできたかも」
小枝子はうんうんと頷きながら話を聞いていた。
「ゆっくりやっていきましょう。急がなくていいのよ」
少しの窘めと労りを込めて貴彦に微笑みかける。
「だめだよ。明日には退院するんだから。それに、感じで分かったよ。元々鍛えていたから、戻るのが早いんだ」
小枝は、言っても聞かないかと、ため息混じりに、
「しょうがないひと。私が付いていてあげましょうね」
と言った。
その言葉に、貴彦の笑顔が輝やく。
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