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「ありがとう。でもあまり太れない質だから、あなた苦労するわよ」
小枝がそう言うと、貴彦は頑張るよと答えた。
そこへ昼食が運ばれてきた。
「あ、ねぇ君も一緒に食べよう。何か持ってこさせるから」
そう言うと、備え付けの電話を取ろうと手を伸ばす。
小枝はそれを制して、
「大丈夫よ。来る途中で買ったから」
と、紙袋からサンドイッチを取り出し、貴彦の食事と並べる。
一緒に買ってきたスイーツを彼に見せてから、
「これ、お見舞いの方とかお母さま達がいらしたら」
と言った。貴彦は、小枝の心遣いがうれしかった。
小枝は飲み物を買いに行くから先に食べていてと貴彦に告げ、病室をあとにする。
小枝がバッグから財布を取り出す姿を見ながら、そう言えば、自分の財布も携帯も母に持っていかれたままだったと貴彦は思い出す。
間もなく小枝が飲み物を手に戻って、二人は一緒に食事を楽しんだ。
ベッドに備えられた可動式テーブルを挟んで、小枝が彼の足元に腰掛け、互いのものを交換しながら食べた。
リハビリの時刻になって、看護師が迎えに来た頃には、貴彦は準備万端で待っている状態で、小枝にはそれが微笑ましく思えるのだった。
看護師が運び入れた車椅子を頑なに拒み、リハビリ室まで歩いて行った。
その様子を見るにつけ、小枝にはリハビリの必要性はないかも、とつい思えてしまうのだった。
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