明かされた真実

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貴彦は、女性スタッフに言って、小枝が用意してくれていたスイーツを二人に勧めた。 小枝の戻りが気になったが、来客に気がついて遠慮したかなと思った。 二人が持ってきた紙袋の中を確認してもらうと、やはり菓子折りだったため、二人に一部持ち帰ってもらうことにした。 二人は遠慮した割に、満面の笑顔で快く受け取り、やがて帰って行った。 入れ違いに小枝が戻る。 「やぁ、ごめんよ。事務所の連中だったんだ。入りづらかったろう」 小枝はにっこり笑って、なんでもないと答えるが、テーブルの上に置かれた封筒を目にすると、表情が変わった。 「それより、この封筒...まさかお仕事?」 小枝の声音は心配を含んでいた。 貴彦はベッドを降りソファーに座ると封筒を開けてみた。 ひとつは榊からで、仕事には違いないが、貴彦をカバーした内容の報告だった。 もう一つは、茅森祥子からで、やはり報告書だが、見舞いの手紙も入っていた。 貴彦は全てにざっと目を通すと、封筒に書類を戻しソファーに寛いだ。 「報告書だよ。さすがの榊も宿題を出すほど鬼じゃないさ」 貴彦は笑って、さっき二人が持ってきた見舞いの紙袋を手にすると、小枝に持ち帰るよう言ってみた。 小枝は、考え事をする時の癖で、人差し指を唇にあてながら何やら考えてから答える。 「...折角だけど、持ち帰るのはよすわ。子ども達に何か説明するにしても、結局嘘をつくことになるし」 小枝のその言葉を受け、貴彦は、彼女の本当の心の痛みを知る。 「そうだね...それはできるだけ避けたいね。いろいろごめんよ」 小枝は柔らかく微笑んで、なんでもないと言った。 貴彦は、小枝が愛しくて、思わずキスをしたくなったが、そこへ看護師がやってきた。
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