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直に診察だと、看護師は告げて立ち去る。
貴彦は小枝に言われてベッドに戻る。
小枝が先ほど買ってきた新聞とコーヒーをサイドテーブルに置くが、すっかり冷めたコーヒーに恐縮していた。
買いなおしに行こうとする小枝を貴彦は止め、すぐにコーヒーに口を付ける。
「冷めたら美味しくないでしょ?」
「コーヒーはコーヒーさ」
貴彦はゴクゴクと一気に飲み干した。
小枝は笑って、
「やっぱり、よほど美味しくなかったのね」
と笑った。
するとそこへ担当医と介助の看護師がやってきた。
小枝は、外にと言い置き病室を出て、待合室で診察が終わるのを静かに待つことに。
待合室は、病棟の分かれ道に位置しており、ガラス張りの壁三面を二つの病棟の廊下とナースステーションそれぞれに面していて、ガラス越しに一方の廊下とその先のエレベーターが見える。
小枝は、今しがたエレベーターから下りてきた人物に気がつき急いで駆け寄る。
将一だった。
将一もすぐに小枝に気がついて、やぁと手を挙げて応える。
その仕草が貴彦とそっくりだと、小枝は思った。
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