明かされた真実

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「貴彦からは、僕の仕事はなんだと聞いていますか?」 「確か、事業をされてるとか...お父様から受け継がれて」 小枝の答えに、表情を変えることなく将一は唸る。 「そう聞いていたんだ。 ...父は財団を抱える企業グループのトップでした」 小枝は胸がドキドキしてきた。 (ザイダン?企業グループ?) 「我が家はいわゆる財閥と呼ばれた家系なのですよ」 小枝は言葉を無くしたかのように、口を開いて息を吸い込んでも、何も音を発せられなかった。 「...秋子も、このことを知った時、今のあなたのような反応だったよ。 驚いただろうが、貴彦は籍を母方にしたし、変な縛りはない。安心して」 小枝はそのまま前傾して頭を抱えてしまった。 (貴彦さんはなぜ話してくれなかったの?財閥の家系だと、何が問題になるのか...) 小枝は、知ってしまった事実をなかなか消化できず、明らかに狼狽えていた。 将一は小枝を見守りながら話し続ける。 「僕は、父の事業を半分ほど継いだ。あとの半分は、時代の趨勢というかな...一族以外が引き継いだんだ」 小枝の半端な知識の中で、財閥とは、巨大な財力で経済界に君臨しながらも敗戦後に解体されたこと、その後再結集されたことなどがうっすら覚えがあった。 次いで告げられた企業の名に、小枝はおののいた。 この国の経済を支える要の中の要の企業の名が、頭の中でグルグルと回っていた。 自分の人生に、格段の差がある人達との関わりというのが、小枝にとっては唯々不可解な事実でもあった。
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