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「無理だなんて、決めつけたらだめだ。何が怖いんだい?あいつが心変わりなんて有り得ないよ。
僕が保証する。君たちはきっとうまくいくから。あいつを信じるんだ」
榊は内心、自分は馬鹿だと思っていた。
だが、小枝を思えばこそ、彼女の悲しみを癒し、幸せを願えばこその嘘偽りのない言葉だった。
小枝は、縋るように榊を見つめる。
「榊さん、お願い」
榊には、小枝の言わんとすることが分かった。
暫くの間見つめ合い、攻めぎ合ったが、結局、榊が折れた。
「僕が君らの間に入ったら、あいつは激怒するだろうな」
榊は、小枝の、心からホッとした顔を見つめ、重い役目ではあったが、このひとが少しでも楽になれるならと心は軽かった。
「榊さんに甘える筋合いはないのでしょうけど...私、こんな精神状態で彼に会うことなんてできないのに、明日会う約束をしてしまったの。
こんなことに巻き込んでごめんなさい」
「偶然ここで会ってしまったのだから、運命だと思うことにするよ。
ほかならぬ君たちが添い遂げるためならなんでもするさ」
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