明かされた真実

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小枝は、できればすぐにでもこの状況から脱してひとりになりたかった。 頭の中は、何かが一杯で空虚という、訳のわからない状況だったから。 榊の励ましはから回る。 「...いいえ、無理なの。いつか終わりを告げられるぐらいなら、今やめたいの」 (そうすれば子ども達を傷つけずに済む) 「どうしてそうと決め付けるんだ?あいつの家がなんだと言うんだ。そんなことなどなんでもないじゃないか。 あいつはもう実家とは切れてるし...そりゃあ、今回のようなことがあれば、血縁としての繋がりは避けようもないが...一体、将一さんからどんな言い方をされたんだ?」 小枝はふと笑った。自分を笑ったのだ。 榊の言う事は多分正答だろうと思う。どうしてと問われれば、自分でもわからない、そう思っていた。 「暫くひとりで考えさせてと、そう伝えてください」 小枝は榊の顔を見てきっぱりそう告げると、ドアを開けて車を降り行った。 榊は、呆気なく立ち去る小枝の後ろ姿をただ見送るしかなかった。 (彼女は本当に別れるつもりなのだろうか。気持ちが変わったわけではないのに、無理に遠ざけても辛いだけだろうに) 混乱と不信の淵にいて、もがく小枝に手を差し伸べたい榊。 だが、小枝を信じているが故、時間が必要とも考えていた。 (彼女自身が乗り越えるしかないか...) 自らの存在の無意味さすら感じて、榊は後部座席のシートに深く埋もれる。 明日、友を訪ねる算段をつけながら...。 (小枝さん...僕じゃだめかい?) ふと心を過ぎる本音を己にさえひた隠していた。
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