決意

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(この人といるといつも怒りを覚える) 胃にストレスを感じ、呼吸を整えた。 話を進めなくては、と小枝は再び話を切り出す。 「それから、住まいのことだけど…あなたはどうしたい?」 「ううん…やっぱ、俺が出るしかないな。金は掛かるが、アパートでも借りるよ」 子ども達の生活環境を考えれば、そうするしかないのが小枝達夫婦の共通の認識だった。 「あなたの地方勤務が終わってこっちに戻る頃には、あの子達も新学期やらでバタバタするだろうから、春休み迄にはどこかに移るわね」 小枝は、予め考えていたことを一気に話した。 「え、ここに住まないのか?」 夫は怪訝な顔つきをした。 小枝は、貴彦のことは隠し通すつもりだった。 「…ここは五人で住むために建てた家だから…それに、あなたにローンを払わせて住み続けることはできないから」 「子ども達が住むんだから、払うよ」 小枝は尚も首を振って見せたが、それ以上言葉を重ねることはなかった。 まだ時間はある、と。 「養育費のことだけど…」 小枝は、この件については夫に任せるつもりだった。 「今まで通りの生活は変えなくていいよ。君は働けないんだから」 ため息混じりの夫の言葉に小枝は傷ついたが、一々気にしていたら駄目だと、自分に言い聞かせる。
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