決意

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ほんの暫く、四人でしくしくと泣いたが、若いだけあって子ども達の回復は早かった。 日頃の両親の様子を知っていただけに、青天の霹靂とまではいかなかったようで、その点は小枝には救いとなっていた。 「...なにか不安なこととか、聞きたいことがある?」 いろいろと一方的に説明するより、子ども達の関心に焦点をあてて話そうとした。 三人は顔を見合わせると、まず末っ子が尋ねる。 「私たちはどっちと住むの?」 「それは私とよ」 三人の緊張感が一気に緩んだ。 「ここに住める?それとも引越す?」 次女が身を乗り出して聞いた。 「暫くはこのまま。あなたたちの生活は変わらないから安心して」 「暫くってことは、いつかは引越すってことだよね」 高校生らしく、長女が突っ込む。 小枝はもちろん、相手が子どもだろうと、正直にすべてを話すつもりでいた。 唯一つ、貴彦の存在以外は。 「やっぱり、ここに住むのは抵抗があるから、私は、準備ができ次第他へ移るつもりよ」 三人とも、ふうんと、納得したかどうか分かりかねる返事をした。 そして思いついたように、末っ子が 「名字は変わるの?」 と、いくらか心配げに尋ねる。他の二人も同調して頷いている。 「ううん、変わらないように申請するわ」 へぇ、と頷くそれぞれの顔は、何となくいつもの明るさを取り戻しているように、小枝には見えるのだった。
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