決意

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名字が変わらなくて済むと聞いて、三人は安心したようだった。 次いで、長女が尋ねたのは田舎の祖母達のことだった。 「京都のおばあちゃんちにはもう行かないの?」 夫の親にしてみたら、唯一の孫で、子ども達も小枝も夫の実家家族は大好きなひと達だった。 「そんな事ないの。ママは他人になっちゃうけど、あなた達はかわいい孫だもん。会いたい時には会えるわ」 なんだか、苦手な父親と離れるだけで、ほとんど今まで通りというのが三人の気持ちを軽くしていた。 小枝は、娘たちの心情がわかり、夫というひとがなんとも寂しいひとだなと、切ないような気持ちになった。 「明日、京都にパパと行ってくるね」 三人とも、ええっ!と驚いている。 昼間夫と話したとき、そういうことになったのだった。 「明日、京都に行って、その日のうちに帰ってくるね。ママの実家は日曜日に行くから」 長女は面白がるような、皮肉のような顔を浮かばせ、 「ばあちゃん達、腰を抜かすだろうね」 と笑った。次女も、そうだねと頷いている。 末っ子は、 「ばあちゃん達、きっと泣くか怒るな」 と、ポツリと呟いた。 「泣くし怒るよ」 と長女が言い変えた。 子ども達は、初めのショックが去ると、これまでの生活がほぼ変わらないことの安心からか、普段の様子と変わりなくなっていた。
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