決意

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暫く小枝の側で静かに話をしていたが、明日部活のある子もいるので、そろそろお風呂に入るようにと号令を掛ける。 それを合図に、三人とも、それぞれの行動に移っていく。 2階に上がった末っ子は、まっすぐ父親の部屋へ行くと、何やら言葉を掛けたようだった。 小枝は急いで片付けをして、朝は早めに出発して、晩までに帰宅する算段をする。 新幹線の予約は夫にまかせてあった。 そして翌日。 京都では、やはり怒られ、泣かれた。 土曜日ということもあり、夫の二人の弟妹も在宅していた。 突然の夫婦のみの帰省に、来ると知らされた昨日から不審な思いもあったようだった。 夫が切り出すと、姑は感情も顕わに怒鳴り出す。 普段の温厚な姑を知る小枝には、姑の深い悲しみがよくわかり、彼女はなにも言い訳をせず、ただ頭を下げて謝ることしかできないでいた。 小枝がこの日、特に辛かったのは、6歳下の義妹の言ったひと言だった。 即ち、父が亡くなった時より悲しいと。 結局、姑たちは、本人たちの気持ちの問題だからと、涙を拭きながら承諾してくれた。 昼前には帰ると告げると、引き止められたが、留守番の子ども達を理由に夫の実家を後にする。 姑との別れ際、いい嫁さんだったよと言ってもらえ、小枝はポロポロと涙を流して答えた。 京都への帰省の際には、いつも車だったが、今回は二人だけの移動ということで、新幹線にした。 久しぶりの二人きりの遠出でもあった。 だが、道中、二人にはほとんど会話はなく、小枝は、その間に貴彦のことや離婚後の諸々のことに集中することができた。 自宅に帰りついたのは、午後5時を回っており、小枝は少しだけ休むと、夫に声を掛け、次女と末っ子を連れ出して外食にした。 部活中の長女にはメールを入れておいたので、途中で合流し、全員が揃ったのは7時過ぎだった。 この家族揃っての食事は最後かもしれなかったが、小枝に感慨はなかった。 明日は、予定通り、小枝の実家の母に会いにいくことになっている。 母は一人暮らしだった。 午前中の早い時間に、二人は訪ねて行くことにしていた。
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