決意

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「会いたかった」 「私も…」 たったひと言ずつ言葉を交わした後は、エレベーターでも言葉はなく、視線を合わせ互いに微笑み合い気持ちを確認した。 玄関に入った途端、唇を重ね、二人は多くを語らずそのまま寝室へ──。 気持ち新たに貴彦と向き合い、愛し合うと、小枝は彼の愛情の深さとその存在の大切さを素直に感じるのだった。 (こうして彼の腕に抱かれていると守られているって思う…やっぱり私はこうするべきだったんだ…) 一刻後、小枝は貴彦の胸に抱かれ、弾む息を調えながら、静かに夢想していた。 ── 生きていくのが精一杯だった。 子どもの頃は、救急病院の時間外によく連れていかれたっけ。 私そんなに悪いの?と、無自覚な私は、医者の顔を見た途端に具合が悪化した。 『この子は弱すぎる』 両親が肩を落としたこの言葉は、未だ幼い私でさえ理解できた。 『大人になるまで生きられない』 医者の言葉は、私と両親に突き刺さった。
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