小枝のこと

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買い物は週一回。 できるだけ買いだめをして、その他の用事もついでに済ませる。 体力のない小枝にとって、外出が何よりの負担だったから。 体調と相談しながら負担をできるだけ軽くして、家事を完璧にこなしたいと彼女は思っている。 だが、身体がどんなにきつくても、夫に家のことや子ども達のことを頼むことはなかった。 まず本人がやりたがらないし、小枝自身、いい加減な仕事を嫌う質だから。 広沢小枝 42才 子は娘が三人 幼い頃から身体が弱く、何度も生死の狭間をさ迷った経験をした。 大人になって少しばかり体力がつくと、待ちかねたように軽めのスポーツにチャレンジした。 健康への自信をつけたことで、結婚し、当たり前のように赤ちゃんを産んだ。 だがお産を重ねる毎に健康状態は逆行していった。 40代に入ると少しの無理で寝込むことが多くなったが、娘たちも育ち、そんなときには助けてもらえるようになっていた。 もちろん、そこへ来るまでの子育ては大変だった。 得てして誰からも誉められもしないことだが、苦労した甲斐あって、彼女の娘たちは優しく素直に育った。 そして何より、自分に似ず、みんな健康に育ったことに彼女は満足していた。
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