分身

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「孝之の指を治してくれて ありがとう。 聖は… やっぱり優秀な外科医だね」 微笑んで言った言葉に 彼は少し照れ臭そうに笑った。 「病室に戻るね」 「うん。 俺も後で様子を見に行く」 聖に小さく手を振って、 私は階段を下りて行く。 …でも私は 気付いてしまった。 どうして聖が屋上にいた 私の元にやって来たのか。 …きっと孝之だ。 私の過去の トラウマだけじゃない。 私が聖のキスを拒めないのも 孝之は全てわかっている。 それなのに聖を 屋上に向かわせたのは 何故なのだろう。 それがどうしてもわからない。 私を手離すつもりで 聖を屋上に向かわせたのか、 それとも… 事故に遭う前の約束を 継続させているだけなのか…。
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