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「うん…」
力なく頷いた私に
再び孝之の瞼が開く。
するすると伸びて来た
孝之の手が私の頬を包んで
真っ直ぐに見つめられる。
「紗枝、ここにいてくれて
本当にありがとう」
「……………」
「気をつけて帰れよ」
あまりに優しい笑みの
孝之にもう何も言えなくなった。
「また…明日来るね」
「うん、待ってる」
息が詰まるような
そんな思いを抱えたまま
私は病室を後にする。
…孝之はあの約束を
継続させただけなんだ…。
自分の足を治してくれた
『伊吹先生』に…
生きる勇気を与えるために。
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