彼とあの人

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「あそこにいる子達を見れば分かりますよ」 彼が顎で差した先には、私よりいくらか若いであろう3人組の女の子。 じっと見ていると、コソコソと何かを話し合ってるみたい。 しばらくすると話し合いを終えた彼女たちが、躊躇いがちに2階へ続く階段を上がっていった。 「ね、普通の人でも行けますよ。利用することはできませんけど。…まっすぐに降りてきますよ」 彼の言ったことは、少し私にとっては難しく首を傾げる。 「どうして?」 素直に聞いてみたのに、彼はなにも答えてくてない。 何かを待つかのように、視線を磨いていたグラスから階段の方に向ける。 「…グラス、落としちゃうわよ」 「慣れてますんで」 スルーされるかと思っていたから、答えが返ってきたことに驚いて言葉が詰まる。 「・・・…そ、そう」 「あ、ほら…来ましたよ。いつもより早かったなぁ」 振り返ってみるとさっきの女の子たちが、今さっき上がっていったはずの階段を下りてきたところだった。 でも、明らかに様子がおかしい。 真ん中にいる子を支えるようにして、3人が下りてくる。 …あの子もしかして、泣いてるの? まさか…… そのときフロアを迂回した彼女たちが、こちらに来ているのが分かった。 グラスを待つ手にキュッと力を入れて、何もみていないかのようにフロアのオーディエンスを見る。 3人がひと席あけて横に座ったのを目の端で確認してカウンターにカラダを戻した。 「マジでありえないんだけど…っ」 「かっこいいからって、あんな風に言うことないじゃない!!」 「ホントそれ!幻滅したわー」 「…ふた、りとも・・そんなに、…悪く、言わないで…っ……」 泣いている小さな彼女の声は聞こえなかったみたい。 そんなのお構いなしに言われ続ける悪口。 「調子乗りすぎだっての」 「イメージ超崩れた」 「私もー」 他の二人が愚痴りあっている間に、彼女は落ち着いてきたみたいで 「でもやっぱり、すごく・・・かっこよかった」 なんて場違いで馬鹿なことを呟いた。 何それ……? あんた馬鹿なんじゃないの? なにを言われたのかは知らないけど、酷いことを言われたんでしょ。 もう少しで出そうになったその言葉を、グラスの中のお酒と一緒に喉の奥に流し込んだ。 その声は聞こえたらしい2人も私と同じことを思ったみたいで、容赦なく彼女の言ったことを否定していく。 「何言ってるのよっ!顔はかっこいいけど、あんなの…最低じゃない」
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