彼とあの人

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「馬鹿なこと言わないでよ。あぁー…気分悪いっ、私踊ってくる!」 「私もっ…」 勢いよく立ち上がった2人は、人の波に消えていく。 追いかける様子もない彼女は、膝の上で小さな手を握りしめた。 「声、掛けないんですか?」 私にしか聞こえないように耳元でバーテンが囁いた。 その顔は『これから先が面白くなりそうだ』そう物語ってる。 見せ物にされられた気分になって、怒りが込み上げてきた。 その怒りをぶつけるみたいに、空になったグラスをカウンターに叩きつけた。 大きな音にびっくりした彼女がこちらを見る。 そんなのお構いなしに、言い放った。 「…帰る」 「えっ?もう?!」 「そうだけど、何?送ってくれるって言うの?」 「それはちょっとアレですけど…もう少しいて下さいよ」 「はぁ?私の時間をあなたにとやかく言われる筋合いなんて、ないはずなんだけど」 飲んだ分のお金をグラスの横に置いて、鞄と上着を掴んで店を出て行った。
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