第4話 もうひとつの戦い

4/26
2595人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
「うーん、マジか。まさか2連続ストライクとはな」 「だ、断君、どうしよう、私、き、緊張して手が……」  次に番を控える断とカナ。カナは震える手を必死に押さえつけている。 「……ほら。ちょい貸してみ」 「へ? だ、断君!?」  その震える手を断の右手が包み込む。すると、ゆっくりとカナの震えが徐々に収まっていく。 「んな緊張することあるかよ。どうせこれはゲームなんだぜ? 負けて死ぬ訳じゃないんだ。気楽にやろうや」 「……そう、だね」  そう言って笑う断の優しさに、カナも少し笑顔になる。  そしてカナはボールをもって画面の前に。断は頭に機械を装着して定位置についた。 「さーて次のお2人、用意は良いですかー!? では、張り切って行ってみましょー!」 「は、はい!」  カナは少し悩んで、決意した様子で投げるモーションをした後、思い切り叫んだ。 「いつも……ありがとおおおお!」 『カコン! 8ポイント!』  真っ直ぐピンの中央に向かった球は全てを倒したかに見えたが、ピンの両端を残してしまい惜しくもストライクとはいかなかった。 「あ……」  小さく呟いて俯くカナ。明らかに落ち込んでいる。 「……カナ」  と、カナの頭に置かれた手。カナが少し顔をあげると、そこには笑う断の姿があった。 「こっちこそ、ありがとうな。まだまだこっからなんだから、落ち込んでられないぞ」 「……う、うん!」 「……大丈夫そうだな」 「そうね」  後ろから観戦していた刃たちも思わず微笑んでしまう。心暖まる光景だ。 「それはいいけど、こっちは全然大丈夫じゃないわよ?」 「続きをお願いします」  その余韻も束の間、刃と光はその手に持った台本の世界に意識を戻す。もう時間はあまりない。台詞合わせの続きをしなければ。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!