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「うーん、マジか。まさか2連続ストライクとはな」
「だ、断君、どうしよう、私、き、緊張して手が……」
次に番を控える断とカナ。カナは震える手を必死に押さえつけている。
「……ほら。ちょい貸してみ」
「へ? だ、断君!?」
その震える手を断の右手が包み込む。すると、ゆっくりとカナの震えが徐々に収まっていく。
「んな緊張することあるかよ。どうせこれはゲームなんだぜ? 負けて死ぬ訳じゃないんだ。気楽にやろうや」
「……そう、だね」
そう言って笑う断の優しさに、カナも少し笑顔になる。
そしてカナはボールをもって画面の前に。断は頭に機械を装着して定位置についた。
「さーて次のお2人、用意は良いですかー!? では、張り切って行ってみましょー!」
「は、はい!」
カナは少し悩んで、決意した様子で投げるモーションをした後、思い切り叫んだ。
「いつも……ありがとおおおお!」
『カコン! 8ポイント!』
真っ直ぐピンの中央に向かった球は全てを倒したかに見えたが、ピンの両端を残してしまい惜しくもストライクとはいかなかった。
「あ……」
小さく呟いて俯くカナ。明らかに落ち込んでいる。
「……カナ」
と、カナの頭に置かれた手。カナが少し顔をあげると、そこには笑う断の姿があった。
「こっちこそ、ありがとうな。まだまだこっからなんだから、落ち込んでられないぞ」
「……う、うん!」
「……大丈夫そうだな」
「そうね」
後ろから観戦していた刃たちも思わず微笑んでしまう。心暖まる光景だ。
「それはいいけど、こっちは全然大丈夫じゃないわよ?」
「続きをお願いします」
その余韻も束の間、刃と光はその手に持った台本の世界に意識を戻す。もう時間はあまりない。台詞合わせの続きをしなければ。
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