第1話 おうじさまとおひめさま

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『……皆、緊急で集まってもらって申し訳ない』 『いえ、それより私たちはともかく……』 『……そうね、私たち“穏便派”まで呼び出すなんて、どういう風の吹き回しなのかしら』 『……貴女ももう知ってるでしょう? “例の噂”を』 『……』 『“例の噂”?』 『あぁそっか。貴女は知らないのね。なら、これから言うことに気を確かに持ちなさい』 『──我らが翔矢様に、彼女が出来たという噂よ』 『(バタンッ!)』 『……全く、気を確かに持ちなさいと言ったのに』 『……確かに、その噂は聞いてるわ』 『なら話は早い。考えは違えど、同じ翔矢様を愛するものたち同士、協力してこの女を──』 『──お断りよ』 『……何故?』 『我ら“穏便派”の理念を知ってるでしょう? “翔矢様の幸せのためにあれ”。翔矢様の選んだ方なら、私達はそれを応援こそすれ、邪魔など以ての外』 『……綺麗事ね』 『何とでも言いなさい。これで話は終わり? だったら私達はお暇(いとま)するわよ。これから文化祭の準備が残ってるんだから』 『……これを見ても、本当にそう思える?(ピラッ)』 『……写真? こんなものがいったい何の──』 『………………なっ!?』 『……どう? “穏便派”のリーダーさん。それはとある有力な筋から手に入れた、翔矢様の彼女さんの写真よ』 『そんな……こんなことって……!?』 『わかってもらえたかしら。私達が今、どれほどの怒りに燃えているか』 『……っ!』 『貴女はこの写真を見ても、その女が“翔矢様に相応しい”と思えるかしら? その女と付き合うことが“翔矢様のためになる”と本当に思える?』 『…………』 『……協力なさい。今回ばかりは、貴女達と私達、利害は一致するはずよ。この人だけは、この女だけは……』 『──こんな姿をする人間が、翔矢様に相応しいなどあってはならないと思わない?』 『(ギリッ!)……わかったわ。今回だけは、協力しましょう』 『我ら“風間翔矢セイバーズ”、略してKSS、決してこの現状を認めてはならず』 『──必ず目標を、排除せよ』
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