第4話 もうひとつの戦い

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「……でも、誉めるところ一杯有りすぎて……」 「……ならば、一番印象に残ったことを言えばよろしいかと。それなら大丈夫でしょう?」 「な、なるほど! さすがルチルさんです! では、行ってきます!」  そう言って意気揚々と所定の位置にたつ立夏。しかし大勢の舞台に立ったことが少ない経験からか、足が微かに震えている。 「……彼女には厳しそうだな、2つの意味で」 「そうですわね。私ですら、ルチルの狼狽した姿など見たこともありませんもの」  その様子を流斗とマリルも心配そうに見守る中、立夏は意を決した1投を投げ放って叫ぶ。 「この前のくまさんパンツ、すっごく可愛かったですー!」 『カコーン! ストライーク!』  力なく放たれたはずの球は速度を急速にあげ、ピンのど真ん中をぶち抜いていった。 「貴女いつそれ見ましたのおおおおおおおおお!?」  そしてさっきまで向こう側にいたはずのルチルは気づけば立夏の胸ぐらを掴んで涙目になっている。数分前までの余裕ぶった様子はまるでない。 「ええ!? あの、この前のお泊まり会の時に可愛いなって思いまして……!」 「……ルチル。貴女また買ってましたの?」 「ち、違うんですお姉様! あ、あれはテーディベアの限定品で、とても貴重な……!」  その一言に光と亮の肩が微かに跳ねるのを気づいたものは誰もいない。 「……テーディベアって確か、鎧亜のクラスの……」  まさかルチルまでもがあのファンだとは予想していなかったが、予想外の趣味もあったものだ。  その後も一進一退の攻防が続き、気がつけば最終フレームを残すのみとなった。 「さぁ盛り上がって参りました! 残るは最終10フレーム。現在の1位は全フレームをストライクで来ている京香&かなめペアと、翔矢&凪ペア! そのあとから他のペアが僅差で続いております!」  見ると、点差的には1位のペアがストライクを3連発しなければ追い抜ける点差。逆を言えば、それさえ出来ればどちらかのペアが勝利ということになる。
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