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「……クソッ、なかなか離せんな。しかし、こちらはストライク必至。恐れることはない! このまま押しきってやるぞ、京香」
「…………えぇ」
だというのに、京香はどこか虚ろげに返す。その瞳の先は、
「どうや凪ちゃん。いけそうか?」
「無論だ。言っただろう、負けはしないと」
ライバルである翔矢と凪のペアに向いていた。
「翔矢こそ大丈夫か。疲れたりなどは……」
「これでも凪ちゃんとやりあったんやで? そこは心配せんでもえぇやろ」
「……すまない、愚問だったな」
仲良さげに話す2人。かなめの目にもその光景が映るが、
「……ふん。あんなものは今だけだ。気にするな京香」
「……本当に、そうなのでしょうかね」
「……どういう意味だ?」
「……いいえ、何でもありません。いきましょうか」
最後の10フレーム目はパートナーと交互に投げ合う。最初はかなめと京香のペア。
「ふっふっふ、ここでオールストライクなら大きく圧をかけることができる。しっかりやるんだぞ京香!」
「……」
「さぁ、とうとう迎えた最終フレーム! 最初はここまでストライクで来ているかなめ京香ペア! ラストフレームもその圧倒的なコンビネーションを見せてくれるのか!? 運命の第1投です!」
その号令に合わせて京香は腕を振り上げ、ボールを投げるモーションをする。その玉は真っ直ぐピンへと向かい、そして
「──あなたは、本当にそれで満足なのですか?」
「……え?」
一気に道を逸れてガーターへ。しかしその結果が表示されても、お互い一歩もその場を動かない。司会も「えっとぉ」と次の言葉を見つけられずにいる。
「……ど、どういうことだ京香!? なんだ今のは!?」
「言葉通りです。かなめ、あなたはこの戦いで勝つことで、本当にあなたの欲しいものを得られるとでも思っているのですか?」
「な、なにを」
「……交代です」
そう一言言うと、今度は京香が装置を着けて立ち、かなめは追いやられるようにボール側に移動した。
「……なんだというんだ」
かなめのボールを握りしめる手に力が入る。
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