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「バカ京香! アホ! 大馬鹿やろう!」
かなめは人目のつかない校舎裏に着くなり大声で地団駄を踏む。
全くわかっていない。京香は誰のために今の状況を作っているのか、全く理解していない。
「……私が、どれだけやってやってると……」
次第に地団駄する足の力もなくなり、全身が力なく項垂れる。
誰も理解してくれない。いや、理解されたいなんて思ってこなかった自分が悪い。それはわかっている。
でも、こんなのあんまりじゃないか。誰かのために動いているのに、何一つ報われないというのは。
自身もそれを覚悟で、ここまでやってきたはずなのに。
「……本当に、バカだな。私は」
『いやいや、それは違うよお嬢さん。やつらは本当に大馬鹿さんだネ』
「……え?」
かなめが辺りを見渡すが、誰もいない。でも、今確かに声が聞こえたような……。
『誰も君の頑張りをわかっちゃいない。君の素晴らしさをわかっていない。そんなのあんまりじゃないカ』
「……え? え?」
確かに聞こえる、誰かの声。頭に直接届いてるような、甲高く、それでいてどこかで低い声が混ざる。
まるでいろんな声が混じって1つの声になっているようだった。
『でも大丈夫だよ、僕は君を見捨てたりしない、あんなやつらとは違う。君の願いを叶えるよヨ』
「ちょ、ちょっと待って! あなたはいったい──」
『大丈夫、怖がらなくてもいいんだ。ただ少し』
『君ノ身体ト心ヲ、貸シテクレレバイイ』
「い、嫌──」
かなめが最後に見たのは、黒い霧に視界が奪われる瞬間。そして、
「きょ、京……香……!」
思わず呼んだ、友の名前。
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