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「……美瑛、里沙。少し良いか?」
I-Gから一ヶ月が経ち、紅葉が深まってきた9月上旬。
舞華女子高の放課後、教室で三条美瑛と遠藤里沙が2人で雑談しているところに1人のクラスメイトがやってきた。何か緊張しているようにも見える。
彼女が来ただけで辺りはざわめくが、2人は至って普通に、
「どうしたの、凪?」
「その……だな、2人に、相談したいことがあるんだが……」
神舘凪。美瑛と里沙の友達であり、IーGを共に戦った戦友。その言葉が嬉しくて、2人は顔を合わせて微笑んだ。
「いいよ、何?」
「その、だな、翔矢とのことなんだが……」
「「詳しく聞きましょう」」
「な、なんで2人ともそんな食いつく!?」
「そりゃ女の子ですから」
一ヶ月前は想像も出来なかった。凪が自分たちに相談を持ち掛けてくれるなど。
それが出来たばかりの初めての彼氏の話となれば、こちらの興味は尽きない。
「……この前、街で翔矢と……その……デート……をしたんだが」
言い慣れていないのか手をモジモジさせながら小さい声で言う。こんな可愛い生物、なかなか見れるものではない。
「うんうん、それで?」
話しやすいように適当に相槌を打っていく。
「……そのときの翔矢が……だな……」
「……もしかして、結構、期待外れだったとか?」
思えば翔矢は子供っぽい面が多いように思う。それが目について直してもらいたいとか、そういうことだろうか。
ところが、返ってきたのは意外な返事だった。
「そんなことはない! むしろその逆なんだ!」
「どういうこと?」
「……私の家系は結構厳しくてな。私は小さい頃から礼儀作法なんかを叩き込まれてきた。だから、相当な相手でないと家は認めてくれさえしない」
「うん、何となく感じるとこはある」
「……それで翔矢はそういうの苦手だろうから、私が叩き込んでやろうと思ったのだ。いつか家に嫁ぐのだから、そのぐらいは出来てもらわないと母上達に認めてもらえないのでな」
さらっと爆弾発言をしているが、今はそこにツッコむと長くなりそうなので止めておく。
「……それで、私たち家族がよく行くレストランに行ったのだ」
「……ちなみにだけど、どこのレストラン?」
「ここだ」
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