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凪がその店のパンフを差し出すと、2人は絶句してしまった。
「「…………」」
「どうした2人とも、いきなり固まって」
美瑛と里沙は顔を合わせて間違いないことを表情から確認しあう。
「こ、ここって……!?」
「あの有名な超高級レストランじゃん!?」
女子なら知らぬものなどいない、いつか彼氏と行ってみたいレストランNo.1にして、街1番の高級展望レストラン。ここから見える夜景は見る者の心を奪うという。
「こ、これは……」
思わず翔矢に同情してしまう。初デートでこんなところとは思わなかった。どう考えてもいつもの翔矢には不似合いだ。
「その食事には私の両親も同席することになっていたから、かなり良い席を用意してもらえてな。こちらとしても助かった」
「ちょ、ちょっと待って! もうご両親に紹介したの!?」
「? 当然だろう。仮にも私の婚約者だ。紹介するのは道理だろ?」
もはや婚約者等の下りが気にならなくなる程度の衝撃だった。まさか翔矢もいきなりのデートで超高級レストランに行くことになり、尚且つ両親同席など思いも寄らないだろう。
「そ、それで……どうなったの?」
一種のホラーを見ている気分になりながら緊張気味に問うと、凪は少し目を逸らしながら、
「それが……だな、私は正直、最初は両親の翔矢に対する印象は悪くても良いと思っていたんだ。それからどれだけサポートし成長したのかが如実にわかった方が良いと思って……。しかし……」
「……しかし?」
「……完璧、だったのだ」
2人は息を飲んで凪の言葉を待つと、返ってきたのは意外な答えだった。
「「……え?」」
「翔矢は礼儀作法どころか、食事でのマナーや言葉遣い、さらには私や母のエスコートまでを完璧にこなし、さらには高級にもかかわらず全額を自腹で払おうとしたのだ」
「「ええええ!?」」
これには2人も度肝を抜かれた。どこからどう見ても翔矢はそういうのが大の苦手のように思っていたのに。
「あとから聞けば、なんでも翔矢の幼なじみがかなり礼儀作法にうるさかったらしくてな。遊びに行った際、教えてもらったそうだ。『覚えがいい』と誉められたらしい」
「……あー」
言われて2人は納得する。そういえば、翔矢の友達に何でもそつなくこなしそうな人を1人知っている。
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