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「お金に関しては昔から貰って貯めていたお年玉から持ってきていたらしく、さすがにそれは私の両親が出させなかったが、それでも両親の翔矢に対する株は鰻登りもいいところだった。翔矢本人は『お年玉やっと使えるときがきたわ』と笑っていたよ」
「うわーお……」
外見は思っていたけれど、まさか中身まで完璧なイケメンだとは思わなかった。
「最初は私の両親もチャラチャラした印象でかなり厳しい感じだったのだが、その翔矢の完璧な振る舞いにすっかり気を良くしてしまってな。『もう籍を入れてもいいんじゃないか』と言い出す始末で……」
「へぇー、良かったじゃない凪! 翔矢君とのこと認めてもらえたんでしょ?」
里沙の言うとおり、それはとても良いことなはずだ。翔矢と凪にとって一番の関門であるはずの両親をこうもあっさり突破できたのだ。コレが良いことでないはずがない。
「それはよかったのだが……問題はその次のデートだったのだ」
「え、もう1回行ったの?」
「あぁ。今度は翔矢が『今日はごちそうになったし、次は普通のデートを教えたる』と言ってきたので、『じゃあ明日はどうだ』と提案した」
土曜日にデートして日曜日もデート……さっきから感じていたことだが、実は凪には一般常識というジャンルにおいて致命的に欠陥があるのかもしれない。
「それで、街の時計台の前で待ち合わせて、お洒落なカフェなどにいって、私が好きそうな物があるところへ行って……といった具合に」
「それのどこが問題なの?」
聞いてる感じ、なにも問題ないように感じる。それこそ理想の彼氏像なのではなかろうか。
「違うんだ、翔矢が問題じゃない。いや、ある種、翔矢が問題と言えば問題なんだが……」
「「……?」」
美瑛と里沙には凪が言いたいことの意図がつかめない。
と、凪は急に頬に両手を当て、顔を真っ赤にさせて言った。
「翔矢が……完璧すぎるのだ……」
「「……」」
「あんな完璧な奴がこの世にいて良いのか!? 格好良すぎるだろう!? ズルいだろう!? 私がどれだけ努力すればアイツに相応しい人間になれるんだ!」
ここにきて、2人はやっと理解した。凪が思ってることは、世間一般では悩みとは言わない。
「なぁ2人とも! 私はあいつの彼女としてどうすればいいんだ!? どうしたら翔矢のそばにいるのが自然なくらいの女になれる!?」
──それはつまり、ノロケであった。
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