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「「……ぷっ!」」
「な、なぜ笑う!? 私は真剣なんだ!」
「ご、ごめんごめん」
思わず失笑してしまった。まさか凪からの悩みがノロケであるなど想像できなかったから。
「でも、今のままでも十分だと思うよ? 私は2人はお似合いだと思うな」
「私もそう思う!」
「美瑛……里沙……」
凪は今まで、"特待生"という立場から人との関わりは最小限にされてきた。
"特待生"は一般人より強い力を持つI'temを所持しているが、それが原因で疎まれたり距離を置く人も多い。自分達だって数ヵ月前はその1人だったし、凪が話しかけて先程クラスがざわめいたのもそういう訳だった。
しかし、凪は変わり始めている。そうだ。凪は、まだ歩き出したばかりではないか。
これまで人との関わりすら制限されてきたのだから、世間知らずでも当たり前だ。
それを教えてあげるためにも、私達『友達』というものがいる。
「ねぇねぇ、プリとか撮らなかったの?」
「プリ?……あぁ、翔矢と一緒に入ったあのゴテゴテした機械のことか……私は写真などは苦手だと言ったのだが、記念にと言われて……」
「撮ったの!? 見せて見せて!」
「だ、ダメだ! これは見せられん!」
「これ……ということは、そこのバックの中に入ってるね、凪?」
「いや、これはだめだ!」
「いいじゃん凪、友達どおしならそういうの見せ合うのもよくあるよ? 恥ずかしくない恥ずかしくない」
「いや、そうではなく……」
そこで少し言いよどんで、ばつが悪そうに続ける。
「……翔矢に、『誰にも見せるな』と言われているのだ」
「「……え?」」
かなり意外な答えだった。凪が恥ずかしいならわかるけれど、なぜ翔矢が周りに見せるのを止めるのだろうか。
「理由とか聞いた?」
「翔矢自身が恥ずかしいらしい。アイツにもそんな感情があったのかと驚いたよ」
さらに違和感が募る。以前、美瑛の双子の妹であり翔矢と同じ桜ヶ峰に通う三条亮に翔矢のことを聞いた際、合宿にて女子の前に裸にバスタオル1枚で出てきたと聞いている。
それが本当なら、彼に羞恥心など皆無と言って過言ではないと思うのだが。
「……ねぇ、凪。そのデート中、翔矢君におかしいとことかなかった?」
「翔矢はいつも通りだったが、私たちを見る周りの様子が変だったんだ」
「……周りが?」
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