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「あぁ。それが実のところ、今回相談した理由でもある」
「……どういうこと?」
「それがだな、デート中、やけに周りから視線を感じたのだ。最初は翔矢に見とれているのだと思った。そりゃあれだけ格好良いのだから、それは当然だろう」
「う、うんそうだね。それで?」
ゾッコンな台詞が純粋に出ている辺り、少し頬が綻んでしまいそうになるのを抑えつつ続きを促す。
「……しかし、次第に気づいたのだ。その周りの視線は翔矢だけじゃなく、私にも向けられていたことを」
それは当たり前な気すらする。凪だって、外見はかなり整っている方だ。いくら特待生として距離を置かれていても、その外見やクールな風貌で校内には密かにファンクラブがあるほどに人気もある。
「きっとお似合いカップルだと思われてるんだよ。気にすることないって」
「そうだよ凪。周りなんか気にすることないよ、2人の気持ちが一番なんだから」
「……いや、実は周りで見ていた視線の方から、一言聞こえてきたんだ」
そこで凪はものすごく沈んだ声で、泣きそうになりながら言った。
「『あの格好良い人の隣にいる人、有り得ないよね』と……」
「「え!?」」
想定外だった。『魅せる仕事』であるモデルの美瑛から見ても恵まれた体型と容姿を持つ凪。それを捕まえて『有り得ない』と言われるとは……。
「……嫉妬されたんじゃないかな?」
「いや、それがそういう声が聞こえたのは1回じゃないんだ。カフェでも、買い物をした店でも、至る所でそのようなひそひそ声が聞こえてきた」
「「……」」
思わず美瑛と里沙は顔を見合わせる。そんなことがあるのだろうか。
こんな美人を捕まえてそこまで言われるのは、きっと何か原因があるだろう。
「……ねぇ凪。さっきのプリ、やっぱり見せてもらえないかな。これは私たちが見たいわけじゃなくて、そんなこと言われる原因を探すために」
「し、しかし……」
「翔矢君と一緒にいて恥ずかしくない人になりたいんでしょ?」
「……翔矢には、内緒にして欲しい」
「当たり前じゃん」
里沙の返答に渋々といった感じで、鞄の中からプリを出し、里沙に差し出す。
「さぁーて、一体どんな──」
そのプリに目を通した瞬間、里沙は固まって動かなくなってしまった。汗もダクダク出てきている。
「……里沙?」
その反応が気になって、美瑛もそのプリを覗き込み、
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