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感動の映画を1本見た気分だ。
翔矢がこの写真をほかに見せるなと言ったのも、実のところはこの凪の姿をほかに見せない為の配慮なのだろう。なんと……なんと優しい嘘だろうか。
「凪、周りの人の声が聞こえてたなら……周りの人とか見てたんでしょう?」
周りに気を配るなら、その姿のおかしさに気づけると思うのだが……と、そんな淡い期待を抱いたが、
「……そ、それは、翔矢が『ワイ以外をあまり見ないで欲しい』と真剣な顔で言うから……」
あぁ翔矢君……翔矢君! 君ってやつは、凪を傷つけないためにどこまで配慮しているんだろう。
「……私、こんなに無償で誰かのために動きたいと思ったの、生まれて初めてだよ……」
地に手を着けたまま呟く里沙の言葉に、頷くことしかできない。
今、凪と翔矢を救えるのは、現状を知る私達だけなのだ。ここで動かなくて、何が“友”か。
「里沙……」
「美瑛……」
立ち上がった里沙と固い握手を交わす。『必ずこの現状を変えてみせる』という固い決意。それを確かめるように。
「……2人とも今度はどうした? まるで敵地に乗り込む戦士のような顔をしてるが……」
「……凪、今度の休み、用事とかあるかな? ううん、あってもキャンセルしてくれるかな?」
「……えっ?」
何よりも、こんなことは『魅せる仕事』をしている美瑛には耐え難いことだった。
こんなにいい素材の凪が、格好悪いという理由で周りから痛い目で見られる。この自分が側にいたにも関わらず、だ。
「その日、服とか買いにいくよ。最低4万は用意してきて。朝10時に時計台前集合。もしお金足りなかったら私が出すから。店もこっちで手配する」
「あ、あの……2人とも顔が怖くないか?」
「……大丈夫だよ、凪。もう私たちがいる限り、二度と『有り得ない』なんて言わせないから」
これは自分のモデル生命すべてをかけた戦いといっても過言ではない。これは命を懸けた、聖戦なのだ。
「あの……美瑛? 里沙? じ、実は翔矢と行ったときに少し服は買っていてだな……」
「それじゃダメ。それじゃあインパクトがない。凪、翔矢君とずっといたいんでしょう?」
「あ、あぁ」
「なら、私達に従って」
──勝負は次に2人が会う場所、そう、1ヶ月後に控えた、桜ヶ峰高校の文化祭だ。
美瑛と里沙は静かに頷て確認しあったのだった。
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