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「……なぁ藍? お前はどこの子で、どこから来たんだ?」
『あいはパパの子だよ?』
「そうだよなああああ可愛いやつめえええええ」
『あいもパパ好きー!』
抱きしめてこれである。さっきから一向に話が進まない。
「ちょっと!? それじゃさっきとなにも変わらないじゃない! 替わって、私がやる」
今度は光が藍の前に座り、深呼吸を1回してから藍に向き直る。
「……ねえ藍、あなたの本当のパパとママはどこにいるの? 大好きなあなたの本当のママは──」
『あい、ママ大好きー!』
「私も大好きよ藍いいいいいいいい!!」
「アーーイ!」
「待て」
ミイラ取りがミイラになるとはこのことか。
「はっ!? わ、私はいったい……」
「まぁ……気持ちは分かるけどさ」
どうやらこの『テレパシー』のようなものは燈気を通じて発生していたらしく、大門寺家にいても光の両親には全く聞こえていなかったようだ。
つまりこの声は刃と光、2人にしか聞こえていない。
さらに厄介なことに、これは燈気を通して2人に届いている。そう確証できたのは、藍の言葉が届いたときの2人の様子から分かる。
「だってこの子……ほんとに『大好き』としか思ってないんだもん……」
燈気とは、この世界の至るところに存在するエネルギー。人の心に反応する性質を持ち、空気のごとく空中に、はたまた水の中や土の中、生命の体細胞の構成なんかにも関係している。この世界になくてはならないもの。
この世界に存在する人の心から生まれる武器、I'tem(アイテム)を構成するのも、100%がこの燈気だ。
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