第1話 おうじさまとおひめさま

31/32
2596人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
 どうしたってネガティブになってしまう。いつも自分はこうなのだ。  慣れてはいるが、慣れたくはない。 「そ、そんなことないよ! 少なくとも私には、刃君が一番かっこよかったもん!」 「……え?」 「……あっ」  言って、しまったという顔をしている亮。みるみる顔を真っ赤に染めていく。 「い、いや、今のは……そのぅ……」  耳まで真っ赤にして、俯いてばつが悪そうに指をモジモジさせる。 「……亮、お前」 「あ、あのね刃君! 今のは違くて、その……!」 「……いいやつだなぁ」 「そうそう良いやつ……え?」 「俺を励ますために、そんな恥ずかしい嘘を堂々と俺のために……!」 ──間違いない。亮は俺を元気づけるために、こんな優しい気遣いの言葉をかけてくれたのだ。  そうとも。三条亮とはこういう女の子だ。良い子で、それこそ彼女のI'temのように、さながら天使である。 「……あ、うん。刃君は……そういう人だったね……」  と思えば、急にシュンと落ち込んでしまった。 「ど、どうした? 俺なんか悪いこと言ったか?」 「う、ううん! そういうことじゃなかったんだけど……ちょっと思ってた反応と違ったというか……」  とは言うものの、さっきと比べて明らかに元気がない。原因は自分であるとしか考えられない。 「気にしないで言ってくれ。気にしたこと言ったんなら謝りたいんだ」 「ほ、ほんとにそういうのじゃないよ! 大丈夫だから、ほんとに!」 「いやそういうわけにいくかよ。ならせめて、お詫びに何か言ってくれ。俺にできる範囲なら何でもやってやる!」 「ほんとに大丈…………え?」  そう言った瞬間、亮の表情が一変した。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!