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「え……えっと……い、今、な……何でもって言った?」
「あ、あぁ」
「ほんとに、ほんと?」
「俺が亮に嘘つく理由があるかよ」
「そ、そうだよね!」
申し訳なさそうに確認する亮にそう返すと、いつもの可愛らしい笑顔が戻る。
「じゃ、じゃあね刃君、良かったら……その……」
でもやはり申し訳ないのだろう。下を向いて口ごもっている。そんな遠慮する必要はないと思うんだけどな、と刃は思いながら亮の言葉を待つ。
「あ、あのね、刃君」
「おう」
しばらくして、覚悟を決めた戦場の兵士のような表情で刃をまっすぐ見据えた。
「……1ヶ月後の文化祭の日……良かったら私と……私とっ……!」
そこまで言ってまた俯き目を強く閉じて、亮が何かを言い掛けた、その時だった。
「確保ぉーーーー!」
『ハッ!』
「!? なんーー」
突如、刃は後ろから腕を固められ身動きを封じられ、
「連行しろ」
「えっ、ちょっ……!」
複数の覆面をかぶった連中に担がれ、どこかに連れ去られる。
「わ、私と……私と……」
もう目の前にはいないとは知らず、亮はその場で1人葛藤するのだった。
「……で、何なんだ、これ」
暗幕で遮られた暗い世界を照らすのは部屋に何本か立てられた蝋燭の灯りのみ。刃が捕縛されたのは、そんな場所だった。
その灯りに浮かび上がる複数のシルエット。どうやら全員怪しげな覆面を被っているらしく顔はわからない。
「……初めまして、火野刃君」
と、その中の1人が前へ出て声をかけてくる。声質からして女性のようだが。
「……お前ら、一体何者だ? 何でこんなことしてる」
「……予想以上に落ち着いてますね。さすがは翔矢様の親友なだけはあります」
「翔矢?」
いきなり飛び出してきた名前に疑問符を浮かべると、その覆面は構わずに話し始めた。
「……率直に言います。私達に協力なさい、火野刃。あなたの親友を、風間翔矢を……救いたいなら」
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