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さらに人の心に干渉する燈気を通しているということは、『藍の気持ちがダイレクトに刃と光に伝わる』ということでもある。
つまり藍の本当に素直な気持ちが2人に伝わっているという事であり、
「……あの破壊力は、反則だよなぁ……」
人間、本当に純粋な好意には実は全く抗体がない。というのも本来、人の本音など自分は知る余地はないし、知ったとしてもそれは言葉だけで、気持ちまでその通りなことなどまずない。
しかし、この火野藍は違う。本当の意味で2人を『大好き』だし、純粋に2人を『パパとママ』だと思っているのだ。
その破壊力たるや、2人を瞬時にヘヴンへと誘う、まさに“魔性”とも言えるものだった。
「……で、どうするか、これ」
「見事に最初に戻ったわね」
2人で深いため息をついて、もう一度その悩みの種の少女に目を向けると、こちらの意向など全く気付いてくれていないようで、ニッコリ笑顔で返した。
『パパ、ママ、あそんで!』
「……はいはい」
半分諦め気味に答えて玩具を取ると、刃の脳裏に1つの案が浮かぶ。
「……なぁ、藍は俺達と会う前、どんな遊びをしてたんだ?」
「……あっ!?」
光も気付いたらしい。そうだ、なにも聞きたいのは住んでいた場所や家族のことだけじゃない。こういう小さな事からでもわかることがあるはず。
胸を高鳴らせつつ藍の言葉を待つと、少し暗い感情が流れ込んできたのがわかる。
『……ひとりでずっと、あそんでたよ』
寂しい。そんな感情がにじみ出ていた。
「……1人で?」
『うん。あいは、ずっとひとりでいたんだ。ここからずっと、ずっととおいところ』
遠いところというと、外国であろうか。
『あいはそこで、ずっとあそんでたの。ひとりで……だれもいないとこで。それでね……そこから、だしてくれたひとがいたの』
そこで明るい雰囲気に戻り、ただただ無邪気に続けた。
『そしたらね、パパとママに会えたの! みんなに会えたの! すっごくうれしかった!』
「……そっか」
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