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言われて気づく。確かに藍が2年後などと言われて理解できるわけない。藍はまだ見た目通りの小学1、2年生ほどの知識しかないのだ。
『……そうなの?』
少し残念そうな藍。うっ……心が痛む。
「……藍、結婚ってのはね、簡単に出来るものじゃないのよ」
「……光?」
そんな藍に光はゆっくり近づいて、頭を撫でながら続ける。
『ママ?』
「……結婚ってのはね、好きな人と好きな人がずっと一緒にいるための魔法みたいなものなの。だから、誰でも簡単に使えるものじゃないの」
優しく藍に言い聞かせる光。後ろから見ているとまるで本物の母親に見える。
『……あい、よくわからない』
「それでいいのよ。私たちだってよくわかってないんだから」
『そうなの?』
「そうよ。だから藍。結婚とかそういう話はもっと後。もっといろんな事を藍が知ったら、そのとき教えてあげる」
「……アイ!」
光の言葉に納得したのか、藍は元気に右手を挙げ、高らかに返事した。
「わかってくれればいいの。結婚以外のことなら何でも答えてあげるから」
『ほんと! じゃあじゃあ、あいね、まだききたいことある!』
「ふぅーん、何? 何でも聞きなさい」
『パパとママは“キス”しないの?』
もう一度、世界が止まるとは思わなかった。
「……………………なして?」
もはや言葉遣いすら怪しくなった光。藍はそんな様子を気にもとめてないようで。
『りゅうとがよんでくれた“えほん”にかいてたよ! パパとママは“きす”をして“しあわせ”になるんでしょ!』
えっへんと胸を張る藍。教えてもらったことを披露して自慢げにしているという子供特有の可愛げある行動だが、今この場においてはそんなことを考える余裕などなく。
「……いや、その、ね、藍。私たちはその……」
『パパとママは“けっこん”するんだよね!』
「………………うん」
『でもまだしないんでしょ? だったらそのまえは“キス”だよね!』
「いや、そのね、藍。キスってのは好きな人同士がするものでね……」
『? パパとママは“けっこん”するんでしょ?』
「……………………うん」
『“けっこん”は好きな人と好きな人がするんでしょ?』
「………………………………はい、そう言いました」
『じゃあパパとママはできるね!』
「………………」
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