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もちろん、この男には大変で無責任なことを口走った自覚はない。
「……本当に? なんでも?」
「ま、まぁ、俺にできること限定なんだけども」
自分にできることなど限られ過ぎているため、それで穴埋めできるとも思っていなかったが、
「……わかった。考えとく」
そう言って蓮はあっさり引き下がってくれた。何やら最後あたりにブツブツ言ってたのは刃には聞き取れていない。
「……あんた、あんな無責任なこと言っていいわけ?」
「は? なんのことだよ」
「……いや、深い意味は全くないのよね。わかってるんだけどさ」
唯一、その状況や心境を読み取った彼女の一抹の不安は、彼の『鈍感』というバットで吹き飛ばされたのだった。
「…………」
そして、その様子を遠くで見ていたルチル。
「私のパートナーはもちろんルチル、よろしくお願いしま──」
「……すいませんお姉さま。私、今回は立夏さんと組むことにいたします」
「「え……?」」
その喫驚の声はマリルと立夏。対するルチルは至って普通に、
「ですので申し訳ありませんが、お姉さまは彼女と組んではいかがですか?」
「か、彼女って……」
マリルが視線を移した先に、ばっちり目を合わせてしまった人間がいる。
「……マリマリ」
「……あなた、その呼び名を止めなさいと言ったはずなんですが」
東蓮。自分に特殊なあだ名をつけたがる、マリルが今までに出会ったことのない人種。
「い、いや! 貴女以外にもっとペアが決まっていないやつがいるはずですわ! 貴女と組むならそちらの方が……!」
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