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(ホテルに入って、もう二時間……か。そろそろだな)
民家の軒先から顔をだした、血色のいい桜の枝にも、ポツリポツリとつぼみが見える。
今年もまもなく花見の季節がやってくる。
おれは、愛田 幸太郎。職業は私立探偵。
と言っても、まだ二年足らずの駆け出しだが。
今日は浮気調査のため、福岡市中央区平尾のホテル街にいる。
ここは民家が建ち並ぶ一角に、六、七件のホテルがひしめく、ラブスポット。
おれの服装はグレーのスーツに、黒のジャンパー。足元には黒いトートバッグ。
バインダーを片手にボールペンを握り、宅地調査員になりすましている。
最近は市民の警戒レベルが上がってるから、同じ場所に長時間いたり、車で張り込みなんかすると、すぐに不審者として警察に通報される。
探偵家業も大変なんだよ。
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