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   おれは愛用のスパイカメラ『ミノックスカメラMCー007』を取り出した。    このカメラの大きさは、百円ライターと縦横は同じくらいで、厚みは倍ほどの超極小。  絞りはなく、光量はシャッタースピードで調整する仕組み。ピントは本体上の小さなつまみで決めるのだが、被写体との距離はいつも勘。  当然、何度も練習しているからファインダーを覗かなくても、ピントずれはおこさない。努力の盗撮家。  おれは考えるふりして腕を組む。重なった下の手にカメラを隠し持ち、ターゲットに向けた。    今回のターゲットは、永井(ながい) 瑞穂(みずほ)、ニ十五才。依頼内容は彼女の浮気調査だ。その依頼を受けたのは十日ほど前のことだった。  
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