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「あの人、悪い人じゃ、ないね」 「……」 「お前はちゃんと 分かってたんだな」 いい子いい子、と頭を撫でてから、 先生は前に屈んで、 わたしの顔を覗き込んだ。 必死で涙を堪えるわたしを見て、 ふっと笑う。 先生が本当の白井さんを 分かってくれたような気がして、 わたしはとても嬉しかった。 先生の首に手を回し、 きゅっと抱きつく。 「ありがとう、先生…」 先生はわたしの背中に手を回し、 ポン、ポン、と叩いてくれた。 「…それから、 お前のことも、言ってたよ」  優しい声が、耳元で囁く。 「『萌ちゃんのこと、 俺に譲ってくれませんか』って、 言われた」 「…え…」
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