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(…お腹空いたな。)
微妙な空気が漂う告白現場から数メートル離れた場所。
壁に身体を預けながらその光景をボンヤリ見ているのは楓。
不意に銀次が溜息をついた。
「用がねぇなら、もういいな?…お嬢との時間が無くなる。」
銀次はそう言い捨てて踵を返し、楓のもとへ歩き出す。
黒髪の女生徒は、銀次の最後の言葉に酷くショックを受けたようで目に涙を溜め、悔しそうに俯くと次の瞬間、楓を睨みつけた。
それに気付いた楓は、訝し気に眉を寄せる。
当たり前だが、最後に銀次が言った言葉を楓は聞いていない。
数メートル離れていたのだ。聞こえるはずもないし、聞こえていようが無かろうが女生徒が楓を恨むのはお門違いだ。
そもそも睨まれる謂れが楓には存在しない。
楓と銀次は付き合っている訳ではない。お互いに気が合うから行動を共にしているだけなのだ。
今の所はーーー。
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