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「お嬢!お待たせ!」
銀次はニカッと笑って楓に駆け寄った。
まるで飼い主に懐く犬のようだ。
「…犬め。」
「ぁん?てか、メシ!屋上だろ?行こうぜ。」
「ん。お腹空いた。」
2人はじゃれ合いながら、屋上に行こうと歩き出すがーー
「ま、待って下さい!」
「…んだよっ。」
銀次は苛立たし気に振り返り、女生徒達を見やる。
声は掛けたのは、先程の黒髪のーー
ではなく。
「この子のっ、ミクの話を聞いてあげて下さい!」
付き添いの女生徒の方だ。
どうやら、黒髪ロングヘアの女生徒は『ミク』という名前らしい。
しかし、楓と銀次にとって、この子達の名前などどうでも良い事。
「…チッ。さっきから何なんだ。用があんならこの場で言え。」
「で、ですから!ミクの話を…ッ!」
「誰も聞かねぇって言ってねぇだろ。さっきから喋らねぇのはその女だ。」
この銀次達のやり取り、
(元々、短気な銀次にしてはよく保ってる方だな。)
なんて呑気に思いながら眺めている楓。
だが、そろそろ限界なようだ。
「こっちが下手に出てりゃ調子ん乗りやがって…。
…いい加減にしろよ。」
食って掛かってきた付き添いの女生徒2人は揃ってビクリと肩を震わせた。
怒鳴った訳でもないのに2人を黙らせたのは、流石は黒澤組の次男坊と言ったところか。
「俺がどこの誰か解ってんだろぉ?いい加減にしねぇとーー」
「ポチ。駄目。」
ガヤガヤする廊下で凛とした声が銀次の耳を震わす。
振り向けば楓がすぐ後ろから、銀次を真っ直ぐ見つめていた。
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