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楓の思考が纏まった頃、銀次達にも動きがあった。
「…銀次先輩は…」
問いかけたのはミク。銀次と目線を合わせないようにか、俯いている。
「…銀次先輩は、楓先輩が居るから私に冷たいんですか?」
「関係ねぇな。ただ、俺はお前等に興味がねぇだけだ」
「…嘘だ!じゃあ何でいつもその女と一緒に居るの!」
「嘘じゃねぇし、ギャーギャー喚くな。…鬱陶しい。」
急に声を張り上げるミクに周りの野次馬達は「何だ何だ。」と騒ぎ出す。
「ちょ、ちょっとミク!落ち着きなよ!」
「そうだよ!どうしたの!?」
今までとは違う不穏な空気に、付き添いの2人は慌ててミクを宥め始める。
だが、ミクは止まらない。
「そんな女より…っ!私の方が銀次先輩に相応しいもん!」
何とも子供染みた言い分だ。
“そんな女”呼ばわりされた楓も呆れたように溜息をついた。
それを見たミクは更に声を荒げるが、周りの野次馬から「自意識過剰」やら「ナルシスト乙ww」などと批難めいた言葉が飛び交う。
渦中の銀次も同様だ。
「楓を“そんな女”呼ばわりしてんじゃねぇよ。鏡見て出直しな。ブス。」
そう言いながら、傍にいた楓の腰に手を回し自分の方へ抱き寄せ、ニヤリと楓に笑いかけた。
銀次の言動で野次馬達は更なる盛り上がりを見せ、「よく言った!」「男前!」などと、口笛を吹いて銀次を持ち上げる。
銀次の心中はさながら、楓を護る騎士(ナイト)気分だろう。何とも単純。
だが、騎士(ナイト)に護られている楓といえば、銀次を番犬程度にしか思ってなかったりする。
しかし、実は満更でもないようで銀次に視線を向けるとフワリと微笑んだ。
今まで見た事のない楓の笑顔に銀次の顔は耳まで真っ赤に染まった。
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