焦りと束縛

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気まずい沈黙。 原因は僕がいきなりテレビの電源を消したことにある。 僕が帰ってきたら依舞がテレビを見ていた。 これはよくあることだ。 問題は見ていたのが行方不明になった人間を捜す、という番組だったということだ。 これを見てここを出ていきたくなったら。 帰りたくなったら。 そう思ったら「ただいま」のあいさつよりも何よりも先にリモコンに手が伸びていた。 プツン、と音を立てて消えるテレビ。 驚いたように振り向く依舞。 リモコンを持ったまま、無言の僕。 『見ないでくれ』 『見るな』 『見ない方が良い』 何と言えば良いのか分からないまま、立ち尽くしていた。
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