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……言い出すタイミングを失ってしまった。
自分に都合が悪い話は、後になったら笑い話となるものと後になればなるほど言い出し辛くものがある。
これは、完全に後者だ。
「どうしよ」
玄関の前にしゃがみ、辺りを駆け回っているリッキーを見ながら――右手の親指と人差し指で支えている合鍵を軽く振る。
魔が差したとしか言いようがない。
車のダッシュボードの上に置きっぱなしだった鍵。
それを、すぐに先輩に渡さず合鍵屋に持っていった。
あの時の先輩はまだ隙だらけだったから。
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