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真上から覗いているので
顔は見えないけれど、
明るい髪をふんわりと結んだ、
少し派手目な風貌から、
同じクラスの
佐緒里(さおり)だとわかる。
「…一度だけで、いいんです…」
小さな声が、壁に跳ね返って
3階に居るわたしたちのところまで
聞こえて来る。
「一度だけ、わたしと…。
そうしたら、諦めますから…」
彩加が目を見開いて、
わたしの顔を見る。
その顔は――明らかに、
面白がっていた。
「(ちょっと、彩加。
……行こうよ……)」
小声で言って袖口を引っ張ると、
彩加がその手を振り払い、
逆にわたしの腕を掴んで引っ張った。
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